MIとはMinimal Intervention/ミニマルインターベンションの略で、う蝕管理における最小の介入のことを指します。このコンセプトは2002年10月にオーストリア・ウィーンで行われたFDI(国際歯科連盟)総会により公式声明として発表されました。
さて、MIとは具体的になにを指すのでしょうか?上記総会では、以下の5項目がMIによるう蝕治療の原則として採択されています。
1) 口腔内細菌叢の改善
2) 患者教育
3) エナメル質および象牙質の非う窩性病変の再石灰化
4) う窩を形成した病変への最小の外科的介入(侵襲)
5) 欠陥のある(不良)修復物の補修
1)、2)、3)はう窩を形成していない状態へのアプローチであり、4)、5)はう窩を形成したう蝕へのアプローチです。
日本では歯科材料メーカーから積極的にMIの概念がインフォームされたように記憶しています。1)、2)、3)に対応する製品も多く発売されたのも事実ですが、そこで特に注目され日本の歯科医たちに支持されたのは、接着技法による歯冠修復(主にCR関連製品)でした。「少なく削る」「小さく削る」などキャッチ―なコピーはWeb等の集患用にも用いられ、「MI=小さく削る」と誤解され広まってしまったように思います。
予防歯科医としては4)、5)に至る前になんとかしたいわけです。1)、2)、3)で、う窩にならなければ、「少なく削る」ことすら不必要になるわけですから。
それでは予防歯科におけるMIとは何でしょうか。トップの画像はマルメ大学歯学部Dan Ericson教授にいただいたピンバッジです。予防歯科におけるMIとはまさに「切削器具(ドリル)がいらない治療」です。日本で広く浸透している「MI=小さく削る」ではなく、う蝕・う窩になる前へのアプローチを積極的に実施する。それが予防歯科におけるMIの概念に他ならないと考えています。
(参考)Tyas MJ, Anusavice KJ,Frencken JE, Mount GJ: Minimal intervention dentistry-a review. FDI Commission Project 1-97; Int Dent J 50,1-12, 2000
FDI Statement: Minimal intervention in the management of dental caries adopted by the FDI general assembly; 1 October 2002, Vienna.
Img : lapel pin for MI
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