予防歯科は歯科医院の専売特許なのか? 通院させるよりもセルフケアの確立を ~一次予防(セルフケア)の大切さ~

投稿者: | 2021年1月18日
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日本の歯科医院のホームページでは、よく「定期検診で予防」「『PMTC』で予防」と書いてあります。これは正しいのでしょうか?

 以前、日本を何度も講演で訪れているスウェーデン王立マルメ大学のDan Ericson教授に「スウェーデンの予防歯科と日本の予防歯科はどこが違いますか?」とあえて漠然とした問いを投げかけました。教授は「う~ん・・・」と考えて「スウェーデンの予防歯科は『お返しするケア』なんだ」と言いました。あくまでスウェーデンの予防歯科の主体は患者さんにあり、患者さんに健康な歯をお返しするケアだと言うのです。日本はどうでしょう。日本の予防歯科は歯科医院に通院させて「歯科医院で管理するケア」になっていないでしょうか。

 ここで教科書的な知識を整理してみましょう。一般に予防医学は三段階に分けて考えます。
 一次予防は生活習慣改善などのセルフケア、健康教育で疾病を未然に防ぐものです。歯科では毎日の歯ブラシやフロス、フッ化物洗口などが該当します。
 二次予防は疾病の早期発見・早期治療による疾患の進展阻止を目指すものです。歯科では定期検診(受診)やPMTC、フッ化物塗布などが該当します。
 三次予防は治療やリハビリなどでQOLの低下防止を目指すものです。歯科ではう蝕治療やスケーリング、補綴治療などが該当します。

 日本の歯科医院での予防処置は、いきなり二次予防が重点的に行われているように感じます。一次予防を国民に認識させることで歯科医院に通院していなくても口腔の健康の維持・増進を図ることが出来るようにする。それが本来の予防歯科医の仕事です。もちろん二次予防の定期検診もPMTCも予防には有効な手段なことは言うまでもありません。日本だと「歯医者に通っているのになぜまたむし歯になるんだ」なんて言う人までいます。スウェーデンの予防歯科を学んでいると「自分の歯は自分のもの、自分で守る」という意識が非常に強いことに驚かされます。まず、この辺の意識を変えていくことから一次予防は始まるのかもしれません。

Img : ダン先生

 

 

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