インプラント、CAD/CAM、再生治療・・・歯科学は日々進歩しています。それでは「最も優れた治療とは何でしょうか」そう問われると「再生治療」と答える日本の歯科医がきっと95%だと思います。確かに失ってしまった歯を再生できたりしたらどんなに素晴らしいことか。私は外来ではたまに外科手術もしますし、インプラントもします。でも、歯科で最も優れた治療は「予防」とりわけ「TBI」だと思っています。今回は「歯科で最も優れた治療はTBI」という話をしようと思います。
第一の理由：歯を失わないための治療だから。
CAD/CAMはう蝕になってしまった歯をどうするかだし、インプラントや再生治療は失ってしまった歯をどうするかです。そもそもう蝕にならなければ、歯を失わなければこのような技術は不要です。
第二の理由：医療費が低コストで済むから。
TBIを受けるのにほとんど医療費はかかりません。日本だと健康保険治療で出来ますし、多くの地方自治体で子供は無料この治療を受けることが出来ます。また、提供する側の医療機関もほとんどコストがかかりません。どんなに優れた治療であっても、患者さんや提供する歯科医院に高額な負担が生じる治療はよい治療と言えないと思います。
第三の理由：数多くの人を救うことが出来るから
TBIがうまくいけば患者さんのデンタルIQは高まり、生活習慣等に行動変容が生まれます。もし、患者さんがお子さんを持つ母親だったとしたら、きっとそのお子さんにも良い影響を及ぼすことが出来ます。例えば、う蝕予防にフッ化物洗口が有効であるというTBIを受け、家に帰ってから家族全員でフッ化物洗口するということも経験します。そうしたら、家族全員で多くのう蝕の発生を予防することができますよね。
患者さんは「最新の治療が最良の治療」と考えがちです。しかし、歯科医は今まで素晴らしいと思われていた治療が実はそうではなかった例にしばしば遭遇します。歯科先進国スウェーデンの歯科医たちは、意外なほどに新しい治療や機器を採用することに慎重です。新しい治療が良い治療ということではなく、エビデンスレベルが高く良いデータが出ていたら、それが良い治療というわけです。今回は「歯科で最も優れた治療はTBI」という話をしてみました。みなさんはどうお考えになりましたか？
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